経済のグローバル化が進んだ現代では、海外に拠点を有する国内企業も多く、海外支店あるいは海外子会社へ役員や使用人を赴任させることもあるかと思います。
また、リモートワークの普及により、海外にいながら国内の職務に従事しているというお話を伺うこともあります。
そこで今回は、海外赴任や出向等により国外勤務となった役員もしくは使用人に対して、国内企業が給与等を支払う場合の源泉所得税の取扱いについて紹介いたします。
まず、海外赴任する役員や使用人が出国後も「居住者」に該当するのか、あるいは出国により「非居住者」に該当するのかによって取扱いが異なりますので、「居住者」か「非居住者」かの判定が必要となります。
「居住者」か「非居住者」か?
国税庁タックスアンサー「№2875 居住者と非居住者の区分」では、居住者か非居住者かの判定について以下のように解説されています。
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。
したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。
以上のことから、海外赴任者が必ずしも「非居住者」に該当する訳ではないのでご注意ください。
海外赴任者が引続き「居住者」である場合の取扱い
役員もしくは使用人が「居住者」の場合には、国内勤務か国外勤務かに関わらず、すべての給与等が日本で課税対象となり(これを全世界所得課税といいます)、その給与等を国内企業が支払う場合には源泉徴収が必要となります(所得税法183条)。
「居住者」に対しては、国外で勤務していても通常の源泉徴収を行うということです。
海外赴任者が「非居住者」となる場合の取扱い
一方で、役員もしくは使用人が「非居住者」に該当する場合は、国内源泉所得だけが所得税の課税対象となり、
国内企業が非居住者に対して国内源泉所得に該当する給与等を支払う場合のみ、20.42%の源泉徴収が必要となります。
※所得税法における国内源泉所得となる給与の定義は、「国内において行う勤務等に基因する給与」となります(所得税法161条1項12号イ)。
よって、「非居住者」に対しては、国内勤務に係る給与等に関してのみ源泉徴収が必要で、国外勤務に係る給与等についての源泉徴収は不要ということになります。
ただし、非居住者への課税の例外として、その非居住者が国内企業の役員の場合は、国外で行われる役員としての勤務に係る給与等も、国内源泉所得に含まれることとなっております(所得税法161条1項12号イのかっこ書き)。
なお、この点については更なる例外があり、国内企業の役員であっても、「国外赴任先では使用人として常時勤務する」ようなケースですと、当該国外勤務への給与等は国内源泉所得に含まれない(=源泉不要)こととされています。
ここまでの内容について纏めると以下のようになります。
居住者 国内勤務 通常の源泉
国外勤務 通常の源泉
非居住者
従業員の場合 国内勤務 20.42%源泉
国外勤務 源泉不要
非居住者
役員の場合 国内勤務 20.42%源泉
国外勤務 20.42%源泉
※国外勤務先で「使用人として常勤する」場合は特例あり
このほかにも、「非居住者」に該当する者については、出国時に年末調整が必要であったり、所得控除が限定的にしか認められないなど、多くの注意点がございます。
また、そもそも「非居住者」に該当することになるのか「居住者」のままなのかという判断が難しいケースも考えられますので、役員や使用人が長期間海外へ行く場合は、事前に弊所スタッフまでご相談ください。
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