生前からできる相続税対策17選|争族・相続に強い税理士の選び方など解説

相続税対策17選|生前からできる争族対策や相続に強い税理士の選び方など解説

遺産が高額になるほど相続税の負担も大きくなるので、相続税対策に興味がある方も多いでしょう。本記事では生前からできる相続税対策17選を紹介するので、どのような相続税対策があるのか、どうやって節税すればよいのか、本記事を読めば大まかな概要がわかります。

また相続において親族間の揉め事になる、いわゆる「争族」が心配な方のために、生前からやっておくべき争族対策5選について解説します。相続税や争族に関する対策方法がわかるので、これから相続を控えている方や、相続に関するお悩みがある方はぜひ参考にしてください。

目次

生前からできる相続税対策17選

相続税対策17選|生前からできること

生前からできる相続税対策17選を紹介します。それぞれの対策内容、対策の効果、注意点などについて解説するので、相続の生前対策をしっかり押さえましょう。

対策1.年間110万円以下の暦年贈与をする

暦年贈与とは、1月1日から12月31日の暦年ごとに贈与を受けた財産に対して贈与税が課税される贈与のことであり、110万円の基礎控除を利用して毎年一定額を家族に対して贈与することです。暦年贈与なら年間110万円まで非課税になるので、贈与税をかけることなく財産を移すことができます。

ただし、令和6年以降の贈与については、相続発生時に7年間分の贈与を相続財産に持ち戻して計算することになるので、長期的に計画して行う事が必要です。

対策2.住宅取得資金の贈与税の特例を活用する

住宅取得等資金の贈与税の特例とは、18歳以上の子どもや孫へ住宅資金を援助する際に一定額が非課税となる制度です。非課税限度額は省エネ等住宅で最大1,000万円、それ以外の住宅で最大500万円。

住宅取得資金の贈与税の特例には贈与を受けたときに贈与者が受贈者の直系尊属であること、贈与を受ける相手のその年の合計所得が2,000万円以下など条件がありますが、その他にも細かい要件が複数定められているため、実際に制度を利用する際は国税庁のホームページをチェックしたり税理士に相談してみたりするとよいでしょう。

対策3.結婚・子育て資金贈与を活用する

18歳〜49歳までの子に結婚、出産、子育てに関する費用のために資金を贈与した場合、1,000万円まで贈与税が非課税になります。具体的には挙式費用や婚礼費用、新居にかかる費用、分娩費、産後ケアの費用、子どもの幼稚園・保育園にかかる費用などが対象になります。

この制度は平成27年4月1日~令和7年までの間に行われた贈与という条件があるため、活用する場合にはこの期間内に贈与を行うようにしましょう。

対策4.教育資金を贈与する

30歳未満の子や孫に対し教育資金を贈与した場合、贈与税が非課税になります。学校等に直接支払われる入学金や授業料、学用品費や給食費など教育に必要な費用などのほか、学校等以外に支払われる学習塾の費用、スポーツや芸術関係の指導に対する対価にも適用可能です。

学校等に直接支払われる資金は1,500万円が上限であり、学校等以外に対して直接支払われる資金の上限が500万円と、それぞれ別に上限が設定されています。

対策5.配偶者控除を利用する

配偶者控除は正式な婚姻関係にある配偶者に適用される控除であり、配偶者控除を適用すれば相続した財産のうち1億6,000万円までは相続税が0円になります。また相続財産が1億6,000万円を超える場合であっても、配偶者の法定相続分を超えなければ相続税はかかりません。

配偶者控除は金額が大きく節税効果が高いので、活用できる場合には積極的に活用しましょう。ただし、二次相続も考えると少なくした方が特な場合もあるので検討が必要です。

対策6.保険の非課税枠を活用する

生命保険金等の保険の非課税枠を活用することで、相続税を軽減することができます。具体的には「生命保険金額ー(500万円×法定相続人の人数)」という計算式で相続税を計算します。たとえば生命保険金3000万円、法定相続人4人といった事例であれば、3000万円ー(500万円×4)=1000万円が相続税の課税対象となる保険金額ということになります。

現金預貯金はすべて相続税の課税対象になるため、この保険の非課税枠を活用することで相続税の課税対象となる現金預貯金を減らすことができます。たとえば現金預貯金1億円あるとすれば、そのままだと1億円に対して相続税が課税されますが、生命保険金等の非課税枠が1,000万円であれば課税対象となるのは1億円ー1,000万円=9,000万円となります。

対策7.子ども・孫に生命保険をかける

子どもや孫に生命保険(終身保険)をかけて保険料を被相続人が支払っていた場合、相続税の評価額は生命保険の解約返戻金の金額になりますが、これにより生命保険を活用することで相続税対策が可能です。

たとえば年間保険料が200万円で10年目のみ2,000万円の解約返戻金がもらえる保険に加入したとします(10年未満は解約返戻金0円)。この場合、仮に5年目で相続があったとすると解約返戻金は0円なので相続税は課税されず、子どもや孫が相続人となれば残り5年分の保険料1,000万円を支払うことで解約返戻金2,000万円がもらえます。また保険金の受取人を子どもにすることで対策6で紹介している非課税枠をフル活用でき、さらに節税につなげることができます。

対策8.小規模宅地の特例を利用する

小規模宅地等の特例とは、被相続人が住居用や事業用に使用していた宅地などの不動産を相続した際に最大80%まで評価額を減額できる制度です。小規模宅地等の特例は、相続人が生活の基盤となる宅地という財産をできるだけ失わないことを目的として制定された制度であり、宅地の使用状況や限度面積など要件がありますが、要件を満たせば最大80%という大幅な減額が適用されます。

特例の対象となる「宅地等」には特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、特定居住用宅地等などがあり、それぞれ細かい要件が定められているため、詳しくは国税庁のホームページをチェックしておきましょう。

対策9.家なき子特例を利用する

故人と生計を同一にする親族が住んでいた土地をその親族が相続して被相続人がなくなった後も住み続けた場合、前述の小規模宅地等の特例を適用できますが、家なき子特例は故人と生計を同一にしていない親族であっても小規模宅地等の特例が受けられる制度です。家なき子特例は6つの要件がありますが、要約してまとめると以下のとおり。

①日本国籍を有する居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者である
②被相続人に配偶者がいない
③相続開始の直前において被相続人の家屋に居住していた被相続人の相続人がいない
④相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者等の親族などが所有する家屋に居住したことがない
⑤相続開始時に、取得者が居住している家屋を所有していたことがない
⑥その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有している

家なき子特例は小規模宅地の特例の要件を満たしていなくても相続した宅地の評価額を最大80%まで減額できる制度であるため、小規模宅地の特例と同じく大幅に相続税を減額できる制度です。

対策10.相続時精算課税制度を活用する

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子や孫などに対して財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。相続時精算課税制度を選択すると、合計2,500万円まで贈与にかかる贈与税が無税になります。ただし被相続人が亡くなったときに相続時精算課税制度を使って贈与した分も相続税の対象となるので、注意が必要です。

そのため相続時精算課税制度は、贈与時から相続するまでのあいだに時価が上昇する財産の贈与や、将来的に基礎控除内におさまる財産しか保有しておらず、生前に高額の贈与が必要な事情のある人にとって節税効果がある制度といえるでしょう。

ただし、令和5年税制改正で内容が変わっていますので、実行する場合には税理士に確認すると良いでしょう。

対策11.アパート・マンション経営をする

現預金で持っているより、土地・建物などの不動産を取得することで評価額を下げられ、さらに、賃貸用アパート・マンション経営をすることで節税効果があります。

土地の場合には相続税の計算において、土地は大きさや使用状況など個別の事情に応じて評価額を下げることができ、建物の場合は貸家であれば評価額を下げることができます。またアパートやマンションなどの不動産を建築するにあたって金融機関から借り入れをすると債務が発生するため、債務の分も相続税から控除されます。

対策12.地積規模の大きな宅地の評価を活用する

広い土地は利用方法が限定されることから売却時に単価が下がりやすく、そのことを加味した地積規模の大きな宅地の評価を活用すれば節税に生かすことができます。地積規模の大きな宅地の評価額は、以下のように計算します。

評価額=路線価×奥行価格補正率×各種画地補正率×規模格差補正率×地籍

この計算はかなり複雑なので、税理士に相談しながら活用するのがおすすめです。

対策13.養子縁組制度を利用する

養子縁組とは、血縁関係のない人どうしのあいだに新たに血縁関係を生じさせる制度です。養子縁組をすることで相続人の人数が増え、節税につながります。たとえば相続税の基礎控除は3000万円+(600万円×法定相続人の数)によって計算されるため、相続人の人数が増えればその分基礎控除額が増えます。

また保険の非課税枠は生命保険金額ー(500万円×法定相続人の人数)なので、こちらも相続人が増えることで非課税額が増えます。ただし法定相続人となる養子の数には制限があり、具体的には被相続人に実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までしか法定相続人にはなれないため、養子の数が多いほど相続税が減るというわけではありません。

対策14.生前に墓や仏具を購入する

墓や仏具には相続税が課税されないので、生前に墓や仏具を購入することで相続税を減額できます。つまり墓や仏具の購入に充てた費用は全額控除されるので、たとえば現金預貯金が1千万円あり、墓地や墓石、仏具などの購入に300万円かかった場合、1,000万円-300万円=700万円が相続税の課税対象額となります。

墓や仏具は必ず必要になるので、購入する場合にはぜひ節税対策を意識して購入を考えるとよいでしょう。

対策15.家族信託を活用する

家族信託は被相続人財産管理を家族に任せる制度です。家族信託を使えば相続財産をどのように使うか相続人が決めて運用・処分できるので、二次相続対策に有効でしょう。

控除などの制度ではないため直接的な節税効果はありませんが、うまく活用することで相続税対策に生かすことができます。

対策16.寄付する

遺産を寄附した場合、一定の要件をみたすと相続税が非課税になります。相続によって得た財産を国や地方公共団体、公益法人などに寄付することで寄付金の控除を受けることができ、寄付した金額は相続税の課税対象から引かれます。

対策17.相続税申告の報酬を税理士に前払いする

相続に関する相談を税理士にする方は多いと思いますが、税理士報酬を前払いすることで相続税を節税できます。税理士報酬を前払いすればその分相続財産が減少するため、たとえば1億円を相続財産に関して税理士に相談し、相続税に関する依頼して300万円の報酬を前払いした場合、相続税の課税対象額は1億円-300万円=9700万円となります。

生前からやっておくべき争族対策5選

生前からやっておくべき争族対策5選

相続では親族同士のトラブルになることが多いため「争続」などとよばれることがありますが、このような争いを避けるための対策を紹介します。

・遺言書を残す
・相続人を明確にする
・相続財産を一覧表にする
・財産を現金化する
・生命保険を活用する

基本的な争続対策としてできることは自分で行い、トラブルを避けて円満な相続を実現させましょう。

対策1.遺言書を残す

遺言書は相続において遺産分割の方法を決める法的効力をもった書面です。正式な遺言書を作成しておけば遺産分割は遺言書の内容のとおり行われるため、相続人同士で協議して分割方法を決める必要がなく揉め事を避けることに繋がります。

ただし特定の相続人に相続分が偏っているなど、不公平な内容の遺言はかえって紛争の火種になるので注意しましょう。相続内容に関して不安があれば、税理士や弁護士などに相談することも可能です。また紛争を避けるためには、なぜそのような遺言の内容にしたのか理由を付記しておくのもよいでしょう。

対策2.相続人を明確にする

相続人が誰になるのかを事前に明確にしておくことで、相続が開始してから予想外のことが起きるのを防げます。相続の順位は民法によって定められており、常に相続人となる配偶の他は子が第一順位、父母・祖父母が第二順位、兄弟姉妹・甥姪が第三順位です

基本的には配偶者と子が相続することになるので問題ありませんが、「再婚して元の配偶者との間に子がいる」「養子縁組をしている」といったような事情がある場合には注意が必要です。法定の順位に従ってあらかじめ相続人を把握し、円滑に遺産分割協議ができるようにしておきましょう。

対策3.相続財産を一覧表にする

遺産分割前に相続財産を一覧表にすることで、どんな相続財産があるのか、全部でいくらあるのかを確認しておきましょう。相続財産は預貯金や不動産だけでなく株式などの有価証券もあり、すべて把握するのにはそれなりに手間がかかります。

預貯金ひとつとっても複数の金融機関をチェックしなければならず、思わぬところから相続財産が出てくることもあるので、余裕を持って準備を進めてください。

対策4.財産を現金化する

現金はもっとも分割しやすい財産なので、財産を現金化しておくことで争続を防ぐ対策になります。高級車や貴金属、株式などは、評価が難しかったり分割しづらかったりするため争族の火種になりやすいという特徴があります。

相続前にできるだけ処分できる財産は処分し、現金にしておくことを意識しましょう。

対策5.生命保険を活用する

生命保険は相続財産に入らず受取人固有の財産として扱われるため、生命保険をうまく活用することで公平に相続をすることができます。たとえば長男に不動産などの分割が難しい財産を相続させ、次男には生命保険を受け取らせることでバランス調整するといった使い方が可能です。

相続対策に強い税理士の選び方

相続対策に強い税理士の選び方

相続対策に強い税理士の選び方としては、まず実績・経験が豊富な税理士を選ぶようにしましょう。実績・経験を知るには、実務経験年数や取扱件数を見るとよいです。また相続税の報酬は一般的に遺産総額の0.5%~1%程度なので、この相場から離れた報酬を提示する税理士は選ばない方が無難でしょう。中には相場よりもはるかに高額の報酬を請求する税理士もいます。

さらに相続税の申告をした後も確定申告や二次相続対策、税務調査対応などやることはいろいろあるので、アフターサービスが充実した税理士を選ぶのもよいでしょう。税理士の選び方についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

相続税対策としてできることはたくさんあるので、身近なことから少しづつ進めていくとよいでしょう。結婚・子育て資金の贈与や教育資金の贈与などはすぐにできる対策なので、子どもがいる方の場合であれば有効な対策です。比較的資産が多い家庭であれば墓や仏具の購入、アパート・マンション経営なども検討するとよいでしょう。

相続税対策や争続対策は事前にしっかり準備しておくことが重要なので、本記事を参考にしてぜひできることから対策を進めてください。税理士法人アイ・タックスでは、相続に関するご相談も行っているのでお気軽にご連絡ください。

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